「0020」 論文 わかるかわからないかは、結局言葉。―「言葉理解読書法」で、『恐慌前夜』を読む。(3) 原岡弘行筆 2009年4月5日

 

 次に、半分の11個にまとめます。同じ内容が、違う表現で書かれているところと、分かれているところを合成していきます。以下に示します。

→ゲシュタポ・金融庁

1.(銀行業とは何の縁もない個人の副島隆彦を相手にするはずもない)

2.(やがて1929年の大恐慌(ザ・グレイト・ディプレッション)の事態を10倍する巨大な金融恐慌が世界を覆う。その結果日本でも起きる取りつけ騒ぎを見越して、アメリカが10年前(1998年)から強制して作らせた。他の官庁が行政改革の方針に従い定員が減らされているなか、発足当時に比べて3倍の1300人に増やされている)

3.(アメリカの手先、竹中平蔵金融相が、時価会計とBIS基準を強引に導入させ、銀行の融資先の貸し倒れ債権リスク評価を厳格に査定するようにと、ハッパをかけた)

4.(リツァイ、ゲハイム・シュタートポリツァイ、Geheime Staatspolizei、ドイツナチス政権の時の国家秘密警察。多くのフランス人愛国者を殺戮した、反ナチス抵抗運動(レジスタンス)をするフランスの人々を捕まえては拷問にかけて殺した残忍な組織)

5.(金融の検査機関ではあるが、その実体はアメリカのグローバリストたちが大恐慌突入を見越して、着々と飼育して育てた現代の特高(とっこう)警察。アメリカのCIAのような国家機関。金融機関や国家の帳簿を細かく見て、いちゃもんやケチをつけることを無上の喜びとするサディストの体質をした人間たちの集まり)

6.(現在では政治思想の弾圧は、表面上はあり得ないことに世界基準でなっているため、お金の取り扱いという私たちの生活にきわめて重要な場面で、国民の自由を奪い取る実質的な弾圧機関。国民生活のすべてのお金の動きに監視の目を光らせる怖ろしい政治警察(思想警察、ソート・ポリス)。各業種の金融法人に対してだけでなく、今後私たち国民にも牙(きば)をむいて、「お金についての生活統制」を仕掛けてくる

7.(“Big brother is watching.”「あなたたち国民の支配者が、いつでもあなたたちの行動を監視しているからありがたく思え」という言葉が登場する、ジョージ・オーウェルの著作『1984年』で警告した人類の未来社会が現実化した組織。私たち日本国民を、官僚制監視社会(警察国家、ポリス・ステイト)で生きることを強制しようとしている邪悪な組織)

8.(財務省(旧大蔵省)から金融検査部門を奪い取り、すっかり訳の分からない弱小官庁にしてしまった)

9.(アメリカのSEC(証券取引委員会)が真の親分であり育ての親)

10.(名寄(なよ)せの整備」(国民一人ひとりの資産を捕捉・監視する行動)を公言してきた。国民とくに資産家、経営者層の個人金融資産を、すべて一元的にコンピュータで管理して把握(捕捉)するのが、監督庁として当然の行為だ、という感覚。住民基本台帳ネットワーク法と、それを補完するために作られた個人情報保護法(という名の、本当は個人情報国家管理法)を作って、これで銀行の預金口座の名寄せ(資産捕捉)を徹底しようとしている。見えすいた国民騙しの手口を使う)

11.(こいつらの動きに対して、私たち国民は、日本国憲法の定める国民の諸自由(諸人権)の規定で、今からもっともっと闘わなければならない。大恐慌突入とともに私たちに襲いかかってこようとしている、アメリカの手先の金融庁という名の特高(とっこう)警察を、解体・消滅させなければならない)

 

 そしてさらに、これらを半分にした5個にまとめます。今度は、意味のまとまりで合成していきます。ここまで来ると、「ゲシュタポ・金融庁」とは何かということがよくわかります。

→ゲシュタポ・金融庁

1.やがて1929年の大恐慌(ザ・グレイト・ディプレッション)の事態を10倍する巨大な金融恐慌が世界を覆う。その結果日本でも起きる取りつけ騒ぎを見越して、アメリカのグローバリストたちが、10年前(1998年)から強制して作らせた現代の特高(とっこう)警察。アメリカのSEC(証券取引委員会)が真の親分であり育ての親。アメリカのCIAのような国家機関。財務省(旧大蔵省)から金融検査部門を奪い取り、他の官庁が行政改革の方針に従い定員が減らされているなか、発足当時に比べて3倍の1300人に増やされている。金融機関や国家の帳簿  を細かく見て、いちゃもんやケチをつけることを無上の喜びとするサディストの体質をした人間たちの集まり。アメリカの手先、竹中平蔵金融相が、時価会計とBIS基準を強引に導入させ、銀行の融資先の貸し倒れ債権リスク評価を厳格に査定するようにと、ハッパをかけた)

2.(リツァイ、ゲハイム・シュタートポリツァイ、Geheime Staatspolizei、ドイツナチス政権の時の国家秘密警察。多くのフランス人愛国者を殺戮した、反ナチス抵抗運動(レジスタンス)をするフランスの人々を捕まえては拷問にかけて殺した残忍な組織)

3.(現在では政治思想の弾圧は、表面上はあり得ないことに世界基準でなっているため、お金の取り扱いという私たちの生活にきわめて重要な場面で、国民の自由を奪い取る実質的な弾圧機関。国民生活のすべてのお金の動きに監視の目を光らせ、お金についての生活統制を推し進めていく、怖ろしい政治警察(思想警察、ソート・ポリス)。ジョージ・オーウェルが著作『1984年』で警告した人類の未来社会が現実化した、官僚制監視社会(警察国家、ポリス・ステイト)で生きることを強制しようとしている邪悪な組織)

4.(資産家、経営者層の個人金融資産を、すべて一元的にコンピュータで管理して把握(捕捉)。住民基本台帳ネットワーク法と、それを補完するために作られた個人情報保護法(という名の、本当は個人情報国家管理法)を作って、これで銀行の預金口座の名寄せ(資産捕捉)を徹底しようとしている。見えすいた国民騙しの手口を使う)

5.(こいつらの動きに対して、私たち国民は、日本国憲法の定める国民の諸自由(諸人権)の規定で、今からもっともっと闘わなければならない。大恐慌突入とともに私たちに襲いかかってこようとしている、アメリカの手先の金融庁という名の特高(とっこう)警察を、解体・消滅させなければならない)

 

 以上の5つが、『恐慌前夜』で解説されている「ゲシュタポ・金融庁」についての、情報量を落とさずにまとめた最小の文章です。

 そしていよいよ、3つにまとめます。中心の意味に近いものだけを残します。他の情報は、ここから連想していけるように工夫します。

→ゲシュタポ・金融庁

1.(やがて1929年の大恐慌(ザ・グレイト・ディプレッション)の事態、10倍する巨大な金融恐慌が世界を覆う。その結果日本でも起きる取りつけ騒ぎを見越して、アメリカのグローバリストたちが10年前(1998年)から強制して作らせた現代の特高(とっこう)警察。アメリカの手先、竹中平蔵金融相が、時価会計とBIS基準を強引に導入させ、銀行の融資先の貸し倒れ債権リスク評価を厳格に査定させた。いよいよ日本にも恐慌が迫ってきているため、発足当時に比べて3倍の1300人に増やされている)

2.(ゲハイム・シュタートポリツァイ、Geheime Staatspolizei、ドイツナチス政権の時の国家秘密警察。多くのフランス人愛国者を殺戮した、反ナチス抵抗運動(レジスタンス)をするフランスの人々を捕まえては拷問にかけて殺した残忍な組織)

3.(住民基本台帳ネットワーク法と「個人情報国家管理法」を使い、銀行の預金口座の名寄せ(資産捕捉)を徹底し、資産家、経営者層の個人金融資産を、すべて一元的にコンピュータで管理して捕捉していく。国民生活のすべてのお金の動きに監視の目を光らせ、生活統制を推し進めていく政治警察(思想警察、ソート・ポリス)。邪悪な組織。国民の自由を奪い取る実質的な弾圧機関。私たち国民は、大恐慌突入とともに襲いかかってこようとしている、アメリカの手先の金融庁という名の特高(とっこう)警察を、日本国憲法の定める国民の諸自由(諸人権)の規定で、今からもっともっと闘い、解体・消滅させなければならない)

 1.がアメリカの戦略、2.がゲシュタポの定義、3.が個人の生活に与える影響となっています。

 なんと『恐慌前夜』には、「ゲシュタポ・金融庁」について、3つの視点から、解説がされていたのです。一読しただけでは、このような色分けはわかりませんでした。最初に本文からそのまま引用したときの状態だからです。そこから3つにまで凝縮して、はじめて理解ができました。

 これで、この本の中心となる言葉(セントラルワード)「ゲシュタポ・金融庁」を理解することができました。

 

(5)理解した言葉を保存する

 理解するだけならここまでで十分です。

 しかし、記憶に再現性をもたせるため、大胆にセントラルワード「ゲシュタポ・金融庁」の情報を1つに集めて保存します。

 ただし、「ゲシュタポ」という言葉も理解する必要がありますので、2つに分割して保存します。分ければ、わかります。

→ゲシュタポ(ゲハイム・シュタートポリツァイ、Geheime Staatspolizei、ドイツナチス政権の時の国家秘密警察。抵抗運動(レジスタンス)をする人々を捕まえては拷問にかけて殺した残忍な組織)

→ゲシュタポ・金融庁(やがて金融恐慌によって日本でも起きる取りつけ騒ぎを見越して、アメリカのグローバリストたちが強制して作らせた現代の特高(とっこう)警察。国民生活のすべてのお金の動きに監視の目を光らせ、資産捕捉を徹底し、生活統制を推し進めていく邪悪な組織。国民の自由を奪い取る実質的な弾圧機関)

 文章として使う場合は、ここまでコンパクトにすれば、ここから展開していくことができます。

 しかし、口頭でも使えるように「決めつけ」をすると、以下のようになります。

→ゲシュタポ(ドイツナチス政権の時の国家秘密警察。人々を捕まえては拷問にかけて殺した残忍な組織)

→ゲシュタポ・金融庁(資産捕捉を徹底し、生活統制を推し進めていく邪悪な組織。金融恐慌によって日本でも起きる取りつけ騒ぎを見越して、アメリカが強制して作らせた、国民の自由を奪い取る実質的な弾圧機関)

 ここまで来たのですから、一言で言いきって終わりにします。

→ゲシュタポ(ドイツナチス政権の時の、人々を拷問にかけては殺していった残忍な組織)

→ゲシュタポ・金融庁(アメリカが強制して作らせた、資産捕捉を徹底し、国民の自由を奪い取る邪悪な弾圧機関)

 これで『恐慌前夜』に対して、「言葉理解読書法」ができました。ここまで徹底してやることで、「ゲシュタポ・金融庁」という言葉が理解できました。

副島隆彦師が語る言葉と一致しました。

 

4.わかるかわからないかは、結局言葉

 

 私が「3.「言葉理解読書法」で、『恐慌前夜』を読む」でやったことは、『恐慌前夜』から、「ゲシュタポ・金融庁」という言葉を探し出して、それらを抜き出し、段階を踏んで要約していくということです。ただ読んでいるだけのときよりも、『恐慌前夜』に対する理解がずっと深まったと思います。頭もすっきりとしました。


(1)言葉を理解していくことが、学習の王道

 人間の記憶は、複数のことは忘れてしまいます。しかし、1つだけなら維持ができます。欲張って、あれもこれも覚えようとすると、結局何も残らなくなります。重要性を複数のことに感じることができないからです。分散されれば、空っぽになります。

 強引に読もう、覚えようとしてはいけません。エネルギーがかかりすぎて餓死してしまうので、絶対に拒絶されます。そうではなくて、言葉を理解していかなければなりません。

 どんどん要約をしていくという作業は、記憶を維持するのに必要なエネルギーを少なくしていっています。理にかなっています。だから、維持ができます。

 また理解をするさいにも有効です。関係性のうすい情報を捨てていくことで、一番大切な意味がつかめるからです。いったん核となる部分をつかんでしまえば、他の情報とのつながりが手に取るようにわかります。本が、無機物から有機物へと変わります。

 中心となる言葉とがっぷり四つに組んで、どんどんと理解をしていくことが、学習の王道だと思います。

 

(2)ラクをして読む方法はない

 世の中には、ラクをしてできるようになる方法があると思っている人がいます。しかし、その先には「悲劇」しかありません。どこに行っても、詐欺師が待ち構えています。ジョン・スタインベックの「怒りの葡萄(The Grapes of Wrath)」で描かれているように、楽園を求めてカルフォルニアに行っても、あるのは辛酸だけです。依存心が強い人は、いいお客さんとなってしまいます。奇跡を求める人に、奇跡はおきません。

 高度な内容の本が、何となく読めてしまうということはありません。頭をフルに使って、全力で読んでいくしかありません。そして、その先には「希望」が待っていると思います。積分値(積み重ね)がどんどん大きくなっていくからです。副島師を始め、SNSIの実力者たちをそばで見ていて、このことに確信を持ちました。

 ラクをして読む方法はないのです。

 

(3)人は1つの考えしか信じることはできない

 書店に行くと、様々な本が並べられています。最近は、ビジネス書がブームです。勝間和代さんがその火つけ役です。「勉強って楽しいよ」ではなく、「勉強するとお金になるよ」ということを全面に打ち出し、自分に自信をなくしかけていた人たちに受け入れられました。

 たとえ世の中がどれだけ不況になったとしても、勝間さんのような人は生き残れます。能力があって、成長し続けていて、かつ勝ち馬に乗っているからです。そこで、「私も勝間さんのようになって、生き残ろう」と考える人が続出しました。

 しかし、実際にはうまくいくことは稀(まれ)です。それはなぜでしょうか。

 信じていないからです。人の書いた本を読むときは、概念(抽象化された共通点をあらわす言葉)を理解することが最も大切です。そこを読み飛ばして、効果・効能の部分だけを得ようとしても、うまくいきません。

 人間は1つの考えしか信じることはできません。「私はキリスト教徒で、イスラム教徒で、仏教徒です」という人はいません。

 もし勝間さんがうたっている効果・効能が得られるようにしたければ、勝間さんを信じればいいのです。信じるためには、概念を理解して、納得する必要があります。その世界観に骨の髄までつかる必要があります。そうすれば、必ず効果は得られます。

 副島本を読むときも同じです。「デイヴィッド・ロックフェラー(David Rockefeller, 1915年―)がこの世界の一番の大親分だ」という世界観を信じるかどうかです。2050年の歴史の教科書にはどのように記述されているかはわかりませんが、この考えを信じれば、副島本はぐっと早く深く読めます。自分が重要性を感じる世界の情報が、次々にくり出されるからです。どんどん吸収していけます。

 「勝間和代・竹中平蔵」を信じるのか、「副島隆彦」を信じるのかは、各人が決めることです。ここでは、両方を信じることはできないとだけ言っておきます。

 

(4)わかるかわからないかは、結局言葉

 「言葉理解読書法」で、『恐慌前夜』のセントラルワード(筆者が一番言いたいことが凝縮されている言葉)である「ゲシュタポ・金融庁」を徹底的に理解していきました。

 私は最初「ゲシュタポ」と「金融庁」の関係がわかりませんでしたが、

→ゲシュタポ(ドイツナチス政権の時の、人々を拷問にかけては殺していった残忍な組織)
→ゲシュタポ・金融庁(アメリカが強制して作らせた、資産捕捉を徹底し、国民の自由を奪い取る邪悪な弾圧機関)

 とまとめたことによって、「金融庁とは、アメリカが強制して作らせた、ドイツナチス政権の時の国家秘密警察であるゲシュタポに相当する、残忍で邪悪な弾圧機関である」という理解が得られました。

 大恐慌時の世界のトレンドであるネオ・コーポラティズム(統制国家的な政策)を体現する組織であることもわかりました。だからこそ副島師は、『恐慌前夜』で「ゲシュタポ・金融庁」という造語を考案して、徹底的に解説したのです。

 大恐慌の時代に、私たち国民の生活がどのように管理、統制されていくのかもわかりました。お金の動きを徹底して捕捉していき、これに対して反発する人たちを弾圧していく機関であるというのが、金融庁の正体でした。

 テクニックだけでは、このような理解は得られないと思います。

 わかるかわからないかは、結局は言葉の理解にかかっています。

 

(5)プロセスを共有できる場

 このように、学習のプロセスを見せるということは、通常の言論活動の場ではできません。自分が考え抜いた結論をもってきて、簡潔にまとめないといけないからです。プロとしてやっていくというのは、そういうことだと思います。

 この「副島隆彦の論文教室」では、他では公表できない性質の文章を載せてもらうことができました。感謝しています。

 荒削りの文章を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

 

(終わり)