「宣伝0002」 宣伝文 『メルトダウン 金融溶解』(トーマス・ウッズ著、副島隆彦監訳・解説、古村治彦訳、ロン・ポール序文)の書評 原岡弘行(はらおかひろゆき)筆 2009年8月23日

『メルトダウン 金融溶解』

 ウェブサイト「副島隆彦の論文教室」管理人の古村治彦(ふるむらはるひこ)です。本日は、『メルトダウン 金融溶解』の宣伝として、書評を掲載します。書評の筆者は、原岡弘行氏です。原岡氏は、本ウェブサイトに「わかるかわからないかは、結局言葉」という論文を三回(論文「0013」、「0018」、「0020」)に分けて掲載しています。今回の原岡氏の書評は、短く、簡潔によくまとめられていると思います。

 それではお読みください。

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「小康状態の今こそ読んでおきたい真面目な金融・経済分析本」

原岡弘行(はらおかひろゆき)筆

2009年8月5日記

 本書は、副島隆彦(そえじまたかひこ)氏の最新の金融・経済分析に関する翻訳本である。

 副島氏の金融・経済本は、直観(ちょっかん)で書かれているため、細かい証明が飛ばされている。その点が不満といえば不満であった。

連邦準備制度ビル


 本書は、経済を流れで見る「景気循環論(けいきじゅんかんろん)(business cycle theory)」を柱として書かれている。その上で、「今度の金融危機の真犯人は連邦準備制度そのものだ」(本書6ペー ジ)と鋭く、厳しく主張している。今回の金融恐慌について、副島氏自身も用いている景気循環論にしたがって、ある程度丁寧な論証がなされている。これが、本書を翻訳した理由であろう。

 

トーマス・ウッズ    ルードビッヒ・フォン・ミーゼス(オーストリア学派)


 一読して驚いたのは、筆者のトーマス・ウッズ(Thomas E. Woods Jr.)氏は筋金入りのオーストリア学派(Austrian School of Economics)だということだ。ここまで一貫した立場で書かれた金融・経済本というのは日本では珍しい。自らの信念を貫き、今世界的に評判の高い2008年ノーベル経済学賞学者のポール・クルーグマン(Paul Krugman)氏に代表される、立場の異なるケインジアンたち(Keynesians)を徹底的に批判している。そして今回の金融恐慌を正しく予測したとして、オーストリア学派を褒(ほ)め称(たた)えている。あまりに手前味噌(てまえみそ)な感じを受けたが、筆者はそれだけ自らの経済理論に自信をもっているのだろう。

    

ポール・クルーグマン  ジョン・メイナード・ケインズ


 本文中には過激なところもあり、「テレビのニュースキャスターたちは訳知り顔で、全ての重要な疑問に、トンチンカンな答えを出す。あたかもそれが彼らの仕事だとばかりに。」(本書22ページ)、「ヤブ医者のような経済学者」(本書84ページ)という箇所では、思わず笑ってしまった。

 本書を読む上で注意しなければならないのは、監訳者の副島氏自身の考えとは異なる部分も含まれているということである。具体的には、「戦争経済(ウォー・エコノミー war economy)」 を批判しているところだ。「ポール・クルーグマンは次のように書いている。『アメリカ経済とニューディール政策を救ったのは、巨大な公共事業であった。それは第二次世界大戦である。第二次世界大戦は、経済が必要とした財政的な刺激策となった』 大恐慌時代に起きたことに関するこの驚くべき、そして酷い誤解に対しては、真実を明らかにする必要がある。」(本書202ページ)という記述は、副島氏の考えとは正反対である。「戦争経済」に関しては、副島氏とクルーグマン氏の考えは同じである。

 さらには副島氏自身の「訳者解説」にも、「オーストリア学派は、自由市場(フリー・マーケット)を至上のものとして信奉している。しかし、自由な市場を過度に言い過ぎると、それは宗教(信仰)になる。」(本書309ページ)という記述があり、副島氏は「自由市場が機能すればすべてがうまくいく」(本書310ページ)という考えを批判している。

 それでも、本書が優れた金融・経済分析本であることは間違いない。訳文も読みやすい。

 前回の大恐慌と同じ流れになるとすれば、今は小康(しょうこう)状態である。しばらくすれば、次の大暴落が来るであろう。本書が警笛(けいてき)を鳴らしている通りである。

 今の時期こそ、冷静に今回の金融恐慌を振り返るときである。「ガケから落ちないで済む」(本書7ページ)ためにも、ぜひとも本書でオーストリア学派の景気循環論を理解しておきたい。

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(終わり)