「0057」 翻訳 中国の地方トップの人事異動(未来の中央指導部に入る人々)についての記事の紹介 古村治彦(ふるむらはるひこ)訳 2009年12月12日 

 

 ウェブサイト「副島隆彦の論文教室」管理人の古村治彦(ふるむらはるひこ)です。今回は中国共産党の地方トップの人事異動についての記事を翻訳し、ご紹介したいと思います。

 記事をご紹介する前に、この場を借りて、いくつかお知らせをいたしたいと思います。

 2009年9月下旬から、翻訳の仕事と歴史についての文章を中心に進めてまいりまして、こちらのウェブサイトの更新が滞ってしまいました。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。今後は可能な限り、定期的に文章を掲載してまいりたいと思います。今後ともご支援、ご指導いただけますよう、よろしくお願いいたします。

 現在、鴨川光(かもがわひろし)氏執筆のサイエンス(学問)についての文章を連続して掲載しております。サイエンスの歴史と分類について、簡潔に書かれております。現在、自然科学の分まで掲載されております。通史的、かつ分類的な学問の歴史が大変読みやすくまとめられております。今後、社会科学についての文章を掲載する予定です。どうぞ、お読みいただき、ご意見をお寄せいただきたいと思います。

 続きまして、新刊発売のお知らせをいたします。副島隆彦先生とSNSI副島国家戦略研究所の新刊『悪魔の用語辞典―これだけ知ればあなたも知識人』(KKベストセラーズ刊)が、2009年12月16日に発売されます。この本は、学問研究・日常生活にあふれる言葉の中からキーワードを選び出し、それらの意味を正確につかみ、解説を加えています。この本は、SNSIの第4論文集という位置づけになります。

 私(古村)も1つの章を担当しました。私は第6章「社会工学」について書きました。社会工学という言葉の持つ、正負両面を簡潔に論じました。まだ書店で売り出されておりませんが、インターネットの書籍販売サイト(アマゾン・ドット・コムなど)で予約を開始しております。よろしければ是非お読みくださいませ。

『悪魔の用語辞典』

 姉妹サイト「副島隆彦の学問道場」でも、『悪魔の用語辞典』を販売しております(こちらからどうぞ)。

 前置きが長くなりました。それでは拙訳をお読みください。

 

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中国指導者第六世代が中国共産党の指導的地位に就いたSixth-Generation Leaders Promoted to Top Party Positions

チャイナ・ブリーフ、第9巻24号
2009年12月3日

ラッセル・シャオ(Russell Hsiao)筆

 

 2007年、第十七回中国共産党大会(Chinese Communist Party Congress)が開催された。党大会開催後、省レベルの党委員会の指導者たちの大規模な異動が行われている。その中のいくつかの異動が中国の指導者の動向を観察しているウォッチャーたちの注意を引いた。2009年11月30日、指導者個人の異動が発表された。31ある省レベルの党委員会のうち、6つで異動が行われた。そのうちの2つの異動が特に目を引いた。胡春華(こしゅんか、Hu Chunhua、46歳)河北省長(Hebei Provincial Governor)は、内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)中国共産党書記となった。また、孫政才(そんせいさい、Sun Zhengcai、46歳)国務院農業部長(大臣)は、吉林省(Jilin Province)中国共産党書記になった。(新華社通信2009年11月30日付;民報2009年12月1日付)

     

胡春華       孫政才      胡錦濤

 胡春華は、胡錦濤(こきんとう、Hu Jintao)中華人民共和国国家主席の親戚ではない。胡春華は、中国共産主義青年団(Communist Youth League、共青団)の代表(中央書記処第一書記)を務めていた(2006年11月―2008年5月)。胡春華は、このことから胡錦濤国家主席に大変近い。胡錦濤国家主席が、共青団派閥(団派、tuanpai)を率いている。更に言うと、胡春華は、約17年間、チベット自治区(Tibet Autonomous Regions)で働いていた。彼は2006年にチベット自治区中国共産党第一副書記にまで昇進した。胡春華のこのような昇進の仕方は、胡錦濤の場合とよく似ている。その結果、胡春華は、マスコミから、「小胡(小さな胡錦濤)」と呼ばれるようになった。(連合新聞網、2009年11月30日;民報、2009年12月1日;ストレイト・タイムズ、2009年12月1日)

 山東省(Shandong Province)出身の孫政才は、中国農業大学から農業学の博士号を取得した。孫政才は、2006年末、中国国務院農業部長に抜擢された。孫政才は農業部長就任当時、43歳で、これは大臣レベルでは最年少の抜擢であった。孫政才は、北京市順義区の区長、中国共産党北京市委員会の第一書記を務めたこともある。(民報、2009年12月1日;大公網、2009年12月1日)

 胡春華と孫政才は、所謂、中国共産党指導者の「第六世代(sixth generation)」に属している。第六世代は、1960年代に生まれ、現在42歳から49歳の人々である。彼らは、現在、省レベルの党書記の地位に昇進している。胡春華と孫政才は第六世代の中核的なメンバーであり、出世頭である。胡と孫は「環球人物(Global Personalities)」誌でも特集された。この雑誌では、5名の「第六世代」の指導者たちが紹介されている。(ウィリー・ラム筆「胡錦濤が第六世代の中心メンバーたちを指名した」、ジェームズタウン財団発行「チャイナ・ブリーフ」2009年5月15日付を参照のこと。翻訳はこちらからどうぞ)面白いことに、胡春華と孫政才は第六世代に属していながら、お互い別の派閥に属している。胡春華は中国共産主義青年団出身であり、胡錦濤率いる団派に属している。一方、孫政才は、温家宝(Wen Jiabao)国務院総理から、その能力を絶賛されたが、習近平(Xi Jinping)中華人民共和国国家副主席率いる「エリート」グループに属している。しかし、複雑なのは、孫は太子党(princeling)には属していないということだ。

     

温家宝        習近平     ケ小平

 胡錦濤国家主席はここ数年、「第六世代」の指導者たちの地歩を固めるために昇進させようとしている。これは、胡錦濤を抜擢したケ小平(Deng Xiaoping)のやり方を真似ているのだ。最新の人事異動は、胡錦濤と温家宝が勇退する2012年の第十八回中国共産党大会の後を見据えたものである。(Sina.com.hk、2009年12月1日)マスコミの中には、「今回の人事異動は、2017年の第十九回中国共産党大会で表に出てくるであろう、第六世代指導者たちが権力を継承するための布石となっている」と報道しているものもある。2017年の党大会の後、権力は第六世代に少しずつ継承され、2022年以降は「ポスト習近平時代」となる。(連合新聞網[台湾]、2009年11月30日)

 今回の人事異動のもう一つの特徴は、省委員会間で、「チームリーダー(一把手、yibashou)が異動したことだ。河北省から内モンゴル自治区へ、吉林省から遼寧省(Liaoning)へ(その逆もあり)、福建省(Fujian)から河南省(Henan)へ、という省のトップレベルの異動があった。これらの人事異動は、ケ小平の金言「中国共産党の幹部は、全国至る所(五湖四海、five lakes and four seas)から迎えなければならない」に合ったものである。中央の指導者たちから見たら、今回の人事異動は、異なる地域の橋渡しを行いながら同時に地方に対する中央のコントロールを強化することにつながったと言える。ナンファ新聞北京支局長のフアン・ションチンは、ケ小平の経済改革以来、中央と地方の矛盾は大きくなっている、と指摘している。地方の利益と国家全体の経済発展との間の横たわる問題は大きくなっている。更に、フアンは中国共産党の幹部たちの間で汚職がはびこっていると述べている。そして、定期的な人事異動を行っても汚職を根絶させることはできない。定期的な人事異動を行っても、せいぜい政界における親分・子分関係が構築されるのを防ぐことしかできない。(BBC中国語版、2009年12月1日)

 省の党書記レベルの人事異動が、今回5つの省で行われた。盧展工(Lu Zhangong)は福建省党書記から湖南省中国共産党書記に転身した。福建省党書記には孫春蘭(Sun Chunlan)が就任した。孫はここ20年で省のトップレベルでは唯一の女性であり、中華全国総工会(All-China Federation of Trade Unions)の党書記を務めていた。吉林省党書記を務めていた王a(Wang Min)は遼寧省党書記に任命された。孫政才は吉林省党書記となった。(新華社通信、2009年11月30日)

    

盧展工     孫春蘭       王a

 

L・C・ラッセル・シャオは、ジェームズ財団発行チャイナ・ブリーフの副編集長を務めている。

 

(終わり)