「210」 翻訳 第18期中国共産党大会報告書(The 18th Party Congress Work Report)の紹介記事を皆様にご紹介します(1) 古村治彦(ふるむらはるひこ)訳 2013年2月10日

 ウェブサイト「副島隆彦の論文教室」管理人の古村治彦です。今回と次の回にわたり、中国共産党大会で報告された文書の紹介記事を皆さんにご紹介いたします。中国共産党大会は5年おきに開催され、その後の5年間の中国が歩む方向性が示されます。党大会報告書は、党大会中に総書記が読み上げる、施政方針演説のようなものです。今回は、指導部が交代し、これからの5年間の方向性が示されています。中国の指導部が何を考えているかがここから分かる、重要な文書です。それでは拙訳をお読みください。

報告書を読み上げる胡錦濤総書記

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第18期中国共産党大会報告書:習近平政権の政策の青写真(The 18th Party Congress Work Report: Policy Blueprint for the Xi Administration)

ティモシー・ヒース(Timothy Heath)筆
チャイナ・ブリーフ(China Brief)第12号23巻
2012年11月30日
http://www.jamestown.org/programs/chinabrief/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=40182&tx_ttnews%5BbackPid%5D=25&cHash=de4e16aa5513509eb1c0212ac6e401e4

 第18期中国共産党大会報告書には、次の5年間の政策ガイダンスを示している。これは、習近平政権が追求する政策のタイプがどのようなものになるかの情報が示されていることになる。共産党大会の報告書を貫いているテーマは、中国が大国として発展するための国内と国際的な基盤を整備していくことである。報告書は、国内に関しては、バランスのとれた経済成長を維持するために、経済に関する構造改革を実行することを求めている。また、統治の質の向上と中国共産党の正統性を促進するために、政治システムの改革を行うことを主張している。台湾に関しては、平和的な統一のための基礎づくりを求めている。更には、党大会報告書は、中国の国力により対応した国際秩序の形成のための一層の努力を求め、中国政府が様々な形の国益を守る決心を固めていることを繰り返している。

 中国の戦略と政策を分析する専門家にとって、中国共産党大会報告書は、研究にとって最重要の文書である。中国研究家のアリス・ミラーは、中国共産党報告書について、「党の優先事項を明らかにし、これから5年間に重点的に取り組む政策が明記されている。更に、中国指導部のコンセンサスが書かれているものだ」としている。(チャイナ・リーダーシップ・モニター第16号、2006年春)ミラーの主張の正しさは、以下の事実からも明らかだ。第18期中国共産党大会の報道官は、党大会報告書作成に当たり、最高幹部たちが参加し、それぞれが協力していることを強調した。習近平は、報告書の草稿作成チームを率い、チームは政治局と直接連携して草稿を作成した。草稿作成に当たり、中国共産党中央委員会は、「調査や研究のために46のチーム」を組織し、報告書に含まれる各項目を網羅した「57の報告書」を作成した。草稿作成チームは、胡錦濤党総書記の協力と助言を受けて、草稿作成を行い、第18期中国共産党大会に最終報告書を提出した。(新華社通信、2012年11月7日)

 いくつかの点で、中国の戦略と政策の分析において、中国共産党大会報告書は重要なものとなっている。党大会報告書は、望ましい戦略的最終目的と中間目標が書いてあり、大体の期限設定も行われている。中国が国家としてこれらの目標に向かって進んでいくために、報告書は、経済、政治、統治、文化、国防、社会福祉、資源、台湾、国際関係などの分野のガイダンスを提示している。党大会報告書は、これらのテーマをつなげるための、中国共産党の社会主義理論を最新のものとするための理論的な論理性も提示している。

■戦略的な最終目的と目標(Strategic End State and Objectives)

 第18期共産党大会報告書は、過去数次の大会で決議された共産党の最終目的と中期目標の概要を示し承認した。(新華社通信、2012年11月8日)これは、中国共産党指導部が、中国が最終目的に向かって「進んでいる」と見なしていることを示している。

●最終目的:第18期中国共産党大会報告書は、最終目的を「中国人民の活力の復活」としている。これは第17期党大会で決定されたものである。指導部は、「国家の復活」を「21世紀半ばまでに、繁栄した、力強い、民主的かつ文明的、そして調和のとれた社会主義的近代国家の建設」と定義している。これは、1949年の中華人民共和国建国から100周年に絡めた目標である。

●中期目標:共産党大会報告書は、2020年までの経済、統治、社会サービスに関する達成目標を示している。そして、目標達成のために「制度(制度、zhidu)」と「体系(体系、tixi)」を強化することを主張している。この主張は、中国共産党、国家、経済制度を強化し、国家の台頭のために必要な強固な国内基盤を確立するという考えにつながる。今回の党大会報告書は、中国の指導者たちは、実現可能性を第一に考える必要があるという提案もしている。これは以前の報告書でも提案されたことである。

■国内の繁栄と安定:中国の台頭の基礎(Domestic Prosperity and Stability: Foundation for China’s Rise)

 共産党大会報告書は、中国が大国となりつつあり、更なる国家の発展のために必要な国内基盤の強化を行うように強調している。そのためには様々な分野の発展が必要であるが、特に、バランスが取れた、持続可能な経済の発展に関するガイダンスを報告書は提示している。具体策として、政府の行政の効率性と責任応答性を改善すること、社会サービスの質の向上を通じて安定性を促進すること、軍備の近代化を進めることを挙げている。台湾については、将来の統一に向けて経済的、政治的基盤を強化することを求めている。

●経済(Economics):党大会報告書は、経済発展が「中国国内の全ての問題を解決する鍵」となるという判断を堅持している。経済に関しては、技術革新、市場の誘因、ITによる「新しい発展モード」を目指すべきだと党大会報告書は述べている。また、消費を促進し、国内市場を拡大し、サービス産業の成長を促す政策への転換も求めている。

●政治と政府(Politics and Government):共産党大会報告書は、適切な統治を通じて、共産党支配の正統性を支えることの重要性を強調している。意思決定プロセスの「システム的な(tixi)」改革による標準化を行うこと、手続きの明文化、法と規律の強化を党大会報告書は求めている。報告書を読み上げる中で、胡錦濤は、腐敗を共産党支配に対する「深刻な脅威」であると述べ、より強固な監視システムの構築を求めた。胡錦濤はまた、中国共産党全体の統治能力と責任応答性の改善のためには改革が必要であることを指摘した。

●文化(Culture):党大会報告書は、中国の国力を増大させるために、中国文化の国際競争力と影響力を高める努力を求めている。また、「人々の道徳性」を向上させるために、中国共産党はこれからもインターネットに対しては厳しくコントロールしていく、としている。

●社会サービス(Social services):今回の党大会報告書では、第17期党大会での決定事項の実施を求めている。教育、雇用、健康福祉、社会保障といったプログラムの拡充を行い、社会の不安定の原因となる諸問題の解決を求めている。

●環境保護(Ecology):この事項は新しい事項である。党大会報告書は、中国の環境の改善を求めている。そして、中国共産党は、 環境問題に取り組まねば、政治的な不安定をもたらすことを認識すべきであるとしている。

●国防(Defense):国防に関しては第17期中国共産党大会の決定を踏襲する形になっている。党大会報告書は、人民解放軍に対して戦争遂行能力の向上し、歴史的な使命をより効率的に実施することを求めている。人民解放軍近代化プログラムを標準化し、機構化するために続けられている努力をこれからも続けていくことも求めている。

●台湾(Taiwan)::党大会報告書は、現在の政策の枠組みで台湾の状況に対処できるという自信を示している。将来の統一に向けて「平和的な両岸関係」の構築のための「政治的、経済的、社会的基礎を統一し、深める」ことが必要だと報告書は述べている。

(つづく)