「宣伝文0010」 『秘密結社イルミナティ入会講座<初級篇>』(アダム・ヴァイスハウプト著、副島隆彦解説、芳賀和敏訳、KKベストセラーズ、2013年)を読んで 古村治彦(ふるむらはるひこ)筆 2013年1月26日

 ウェブサイト「副島隆彦の論文教室」管理人の古村治彦です。今回は、今月発売されました本を皆様にご紹介します。それが『秘密結社イルミナティ入会講座<初級篇>』です。私は、世間で言われる陰謀論というものには全く詳しくありません。フリーメーソンだと言われても、イルミナティだと言われても、「聞いたことはあるけれど、何をしている人たちなのか、いや、実際に存在しているのかどうかも分からない」ということになってしまいます。

 一時期、テレビの都市伝説を特集する番組で、フリーメーソンが取り上げられたこともあり、それを見たこともありました。しかし、そこまで詳しくなりたいとか興味を持ったということはありませんでした。

 私の持つ知識と感覚は恐らく多くの方々と同じだと思います。「フリーメーソン(Free Masonry)やイルミナティ(Illuminati)というのは聞いたことがある。しかし、何をしているのか、いや、実際に存在しているのかは知らない。おぼろげな記憶では、これらは、何か恐ろしいことをしているような話は聞いたことがある」と多くの方々は思っておられると思います。私もそうです。

 この本『秘密結社イルミナティ入会講座<初級篇>』を読むと、イルミナティの目的が「人倫を高めること」で「至福の状態に到達すること」であることが分かります。そして、理性こそが人類を導くものであると述べています。本書から重要な部分を引用します。

(引用はじめ)

 唯一の原則が支配するところ、知行合一(Einformigkeit der Gesinnungen und Hadlungen ルビ:アインフェルミヒカント・デア・ゲスィンヌンケン・ウント・ハンドルンゲン)が帰結するのは必定(ルビ:ひつじょう)である。

(中略)

 すなわち、純粋理性(reine Vernuft ルビ:ライネ・フェアヌンフト)が常に人間の行為の導き手であり、各人がこの目的を常に念頭に置いている場合、誰もが自らにこの法を命じたくなる性質のものでなければならない(99ページ)

(引用終わり)

アダム・ヴァイスハウプト

 イルミナティの創設者であり、この本の著者アダム・ヴァイスハウプト(Adam Weishaupt、1748―1830年)は、インゴルシュタット大学の教会法を教える教授でした。しかし、イルミナティに対して禁止令が出た後は、大学を追われ、インゴルシュタットを離れざるを得なくなり、ザクセン公エルンスト二世の庇護を受けました。確かに、この本『秘密結社イルミナティ入会講座<初級篇>』には、君主制や教会で人間の人倫が高まることはないということが書かれていますから、イルミナティは当時としては、大変危険な思想を持つ団体ということになります。

 しかし、お読みいただけると分かるのですが、どこにもオドロオドロシイことや、恨みや脅迫に基づいた文言はありません。「人間が至福に至るには、理性を磨く必要があり、それをやりたい人たちが団体を作りましょう、皆さん、覚悟を持って入ってください、上下関係はありますが、それは人間を成長させるためにのみあるのです」ということがひたすら書かれています。

 この本には「入会講座〈初級編〉」という言葉がつけられていますが、まさに言い得て妙だなと思います。イルミナティという人間の理性を高めることを目的にしている団体は、どのような目的を持っていて、どのような人を求めていて、入ったらどうすべきだということが書かれています。

 現在であれば、このイルミナティという団体は何も危険ではありません。しかし、その当時の体制側にとっては共和政を求める大変危険な思想を持つ人々の集まりだと思われたことでしょう。だから、攻撃や迫害が大きかったということは分かります。従って、こういう団体は、表に出ず、秘密のうちに組織され、運営されねばならなかったのだろうと思います。

 本書『秘密結社イルミナティ入会講座<初級篇>』は、組織論や組織に入るうえでの心構えをドイツ人らしく、細かく、生真面目に書いてあるなと感心します。付録の「付録 秘密結社の組織論」は、現在の私たちの生活にも役立つことが多く書かれています。また、本書『秘密結社イルミナティ入会講座<初級篇>』の最初にある副島隆彦先生の解説も重要なポイントが紹介されています。

 秘密結社や陰謀論に興味がない方にも大変役に立つ内容の本です。皆様、どうぞ手に取ってお読みくださいませ。

(終わり)