「242」 翻訳 「アメリカは世界ナンバーワンの国だし、これからもそれは続く」と主張する論稿をご紹介しますB 古村治彦(ふるむらはるひこ)記 2014年10月3日

●軍事力と同盟諸国

 いかなる側面から見てみても、我がアメリカの軍事力に匹敵する力を持つ国は存在しない。この状況がすぐに変化することはない。軍隊の規模で見てみれば、アメリカの年間の軍事費は、2位以降の10カ国の軍事費を足した金額よりも大きいのである。アメリカの軍事予算の規模は、第2位の競争相手、中国の5倍である。しかし、中国が急速に人民解放軍の装備と規模を拡大させているのは注意を要する。我が国は13年間にわたって戦争を戦ってきた。これはアメリカ軍が経験した中で最も長期にわたる戦争であるが、これほどの戦争を経験してもなお、我が国はいかなる敵をも打ち破る能力を有しているのである。

 しかし、これらの側面があっても、我が国の軍隊の真の優位性は過小評価されているのである。米海軍は世界にある20の空母のうちの11を保有している。アメリカは地上で唯一、世界中で軍事作戦を展開する能力を有している国家なのである。これまで10年以上にわたり、テロとの戦いを経験してきた。この経験を通じて、我が国の特殊部隊は、アメリカ独自の資産である。2011年5月、アメリカの特殊部隊は、パキスタンのアボッタバッドのオサマ・ビン・ラディンの隠れ家を急襲した。この地はアメリカから7000マイルも離れていた。この攻撃は、我が国の特殊部隊が世界中の危険な場所での複雑な任務をいかにうまく遂行できるのかを示した。

 歴史的に見て、現在のアメリカの防衛負担のGDPに占める割合はそこまで過重とは言えない。私たちはアフガニスタンでの戦争を徐々に集結させている。これによって、アメリカ国内でも懸念を持っている人々がいる、軍隊の無理な拡大をすることなく、米軍をより持続可能な状況に置いておくことができる。

 私たちは50を超える国々と正式な同盟関係を結び、ネットワークを築いている。これは歴史上最大の規模である。このネットワークは二国間の同盟関係をベースにして、50年以上かけて構築されてきたもので、その中心にはアジアとヨーロッパの条約で同盟関係を結んだ国々が存在する。このようなネットワークを持っている国はアメリカ以外には存在しない。確固とした同盟関係こそがアメリカだけが持つ強さであった。私たちは、世界中の同盟諸国との関係をより深化させ続ける。

●地理上の幸運

南北アメリカ大陸

 アメリカの地理上の位置と天然資源は、私たちが持つ最も自然な強みである。こうした永続的な強さはあまり議論されることはない。しかし、地理的位置によって、アメリカで最初の入植者たちが暮らし始めて以来、アメリカ人は安全にそして豊かに暮らせてきたのである。私たちは大西洋、そして太平洋の大国なのである。そして米アメリカ大陸と北極圏を占める国家なのである。我が国は海洋と友好諸国との国境線によって守られている。アメリカは属する国家のほとんどが安定した民主国家である半球に位置する。そして、南北アメリカ諸国との間で友好的な、そして生産的な関係を有している。戦略の基盤となるのは、アメリカは自身が属する半球において脅威を持たないという事実である。

 独特なのは、アメリカは天然資源を海外に依存しない大国であるということだ。我が国は、エネルギー資源を自国内に持っているが、それ以外にも様々な価値の高い天然資源をも有している。アメリカは世界最大のレアアース類の埋蔵量を誇っている。現在、レアアース類を巡る争いは激しくなっている。我が国の大地は肥沃で、世界の有数の穀倉地帯となっている。また、アメリカは世界最大の農産物輸出国である。我が国の豊かな農地によって、アメリカ国民は農産物価格の乱高下と食糧不足から無縁でいられるのだ。こうした自給自足可能な国土を持つからと言って、私たちが海外のことを無視してよいということにはならない。我が国の利益は一国の国内に留まるほどに小さいものではなく、世界各国の運命は相互に連関しているのだ。しかし、アメリカの地理上の位置は、我が国が世界中で利益を追求する時に、より大きな行動の自由を与えてくれるのだ。

●人口と移民

 我が国の人口について考えてみる。私は明るい未来が待っていると考えている。我が国の労働力は比較的若く、その数は増加している。現在から2050年までの間に、アメリカの人口は1億人増加するという予測が立てられている。労働力は40%増加すると言われている。西ヨーロッパ諸国、日本、韓国といった先進諸国では、同時期に人口は高齢化が進み、減少していく。2050年、中国の中央年齢(median age)はほぼ50歳となるが、アメリカは40歳となると予測されている。

 我が国の人口を巡る状況が世界各国よりもより良いものである理由は、我が国が移民国家であることだ。移民はアメリカの人口の大多数よりも若く、アメリカ生まれの人々よりも多くの数が労働力となっている。移民たちが形成する社会は創造性(creativity)の源泉でもある。そして、アメリカは高い技能を持つ移民を惹きつけるという点で、他の先進諸国を圧倒している。外国生まれの企業家や科学者たちはアメリカに居住し、アメリカ市民となることを選んでいる。それは、他の先進諸国に比べ、我が国の労働市場への参入とその中での移動がより容易であるからだ。我が国の開かれた社会はどの国の社会よりも、人々の統合を促進するのである。

 こうした理由から、連邦議会が包括的な移民法改正案を通過させることが重要となってくるのだ。この改革は単なる国内問題ではなく、戦略上の問題なのである。人的資源の分野で持つ我が国の優位性を確保することが重要なのである。

●指導者としての気概

 アメリカの世界における指導者としての役割が最後の資産であると言える。長年にわたり、アメリカ国民は、戦争と抑圧による傷によって分裂した世界の中で、リーダーシップを発揮してきた。私たちは自分たちが信じる価値観を守り、普遍的な人権思想を拡散するために、アメリカ人の血と財産を繰り返し提供してきた。世界は現在も私たちがリードすることを期待している。世界中の人々は、アメリカが、世界の商業を守り、エネルギーの自由な流れを強化し、危険な武器の拡散のコントロールを行ってくれるだろうと見ている。

 多くの国々がその国独自の影響力を持っている。しかし、影響力と指導力との間には大きな違いがある。アメリカは自国が持つ力以上の力を発揮している。アメリカは国力以上の、世界各国を糾合し、国際的な努力を調整する能力を有している。それは、アメリカの価値観、指導者としての伝統、現在うまく機能している国際システムを育ててきたという事実が世界中の人々を惹きつけるからなのだ。

マデリーン・オルブライト

 クリントン政権で国務長官を務めたマデリーン・オルブライト(Madeline Albright 1937年〜)はアメリカを「世界にとって必要非可決な国家」と呼んだ。それは、アメリカの関与がなければ世界の諸問題を解決できるかないからだ。ヨーロッパ、中東、アジアに存在するアメリカの同盟諸国は、それぞれの地域においてアメリカが積極的な関与を行うように求めている。アメリカの力に対しては反発が起きることもこれまであったが、民主政治体制、自由市場、人権尊重といったアメリカの価値観に対する強いあこがれもまた広く存在する。今日の世界を動かす主要な力は、アメリカの指導力の否定ではなく、アメリカがもっと指導力を発揮して欲しいとする人々の願いだ。我がアメリカが現在の世界で果たしている指導的な役割を、他のいかなる国が同じように担えるということを想像することは困難である。

(つづく)