「0047」 翻訳 アメリカは日本の総選挙結果をどう受け取っているのだろうか スティーヴ・クレモンスとスティーヴン・ウォルトのブログから 古村治彦(ふるむらはるひこ)訳 2009年9月3日

 ウェブサイト「副島隆彦の論文教室」管理人の古村治彦です。今回は、スティーヴ・クレモンスとスティーヴン・ウォルト、2人のブログから、彼らが、今回の総選挙について書いた文章を翻訳したものを掲載したいと思います。結論から申し上げると、アメリカの理知的な人々は、このような落ち着いた感想を持つのだろうと思います。

 スティーヴ・クレモンスは、ニューアメリカ・ファウンデーションという研究所のアメリカ戦略プログラムの主任で、日米関係の専門家です。ややリベラルな人で、アメリカでは有名なブロガー(ブログを使って意見主張を行う人々)です。彼のブログは「ザ・ワシントン・ノート」(アドレスは、http://www.thewashingtonnote.com/)です。クレモンスはまた、日本国際問題研究所で発生した言論弾圧(玉本偉博士の「カルト・オブ・ヤスクニ」論文の削除)を世界に紹介した人です。下記の訳文にもある通り、2009年9月2日に行われたCSISで行われた日本についてのフォーラムにも出席していました。

クレモンス

 このフォーラムの模様を見る限り(CSISのウェブサイトで全部を見ることができます)、カート・キャンベル国務省東アジア担当国務次官補とこのクレモンスが落ち着いた、理知的な議論(日本はデモクラシーと独立をサポートしたい、アジアとの友好関係を築くことも手助けしたい)をしていましたが、マイケル・グリーンは何とか騒ぎにしよう(これから先不透明でどうなるか分からない)としていました。

 もう一人、国際関係論の大家、スティーヴン・ウォルト・ハーバード大学政治学教授は、言わずと知れた、『イスラエル・ロビー1・2』(副島隆彦訳、2007年9月、10月、講談社刊)の共著者です。ウォルトは、国際関係論の中の、リアリズムという学派に属する学者で、中東関係に強い学者です。彼は、アメリカの外交誌「フォーリン・ポリシー」誌のウェブサイト内に、ブログを持っていて、様々な文章を書いています。アドレスは次のとおりです(http://walt.foreignpolicy.com/)。日本の専門家ではありません。しかし、アメリカの一流の政治学者が、今回の、日本の総選挙の結果をどのように捉えているか、良く分かります。

ウォルト

 「0046」で掲載した鳩山論文が、アメリカを激怒させた、という報道が日本でもなされていますが、これは、「アメリカの一部」と訂正すべきでしょう。具体的には、「騒ぎを起こして得をする人々」です。マイケル・グリーンやジェラルド・カーティスなどの日本管理担当班(ジャパン・ハンドラーズ)は、自分たちの注目を集め、メディアに出て、あと研究費を貰うために、このようにマッチポンプ的な行動をしているのでしょう。そして、日本のマスコミの中にいる協力者たちが「火に油」を注いでいるのでしょう。

   

グリーン      カーティス

 しかし、下記の訳文を読めば、アメリカが激怒しているなんてことはないことが良く分かります。

 それでは拙訳をお読みください。

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「今回の日本の総選挙の結果は問題だろうか?CSISフォーラム(ボブ・シーファー、カート・キャンベル、マイケル・グリーン、スティーヴ・クレモンス)開催」

スティーヴ・クレモンス

ワシントン・ノート(ブログ)
2009年9月2日

 先週(2009年8月30日)に、日本で投開票が行われた総選挙の結果は、日本の民主政治体制にとって大変重要な結果となった。そして、政権交代によって日本の国家安全保障政策は大きく変化するかどうか、多くの人々が疑問に思っている。

 時代は移り変わっている。日米関係は、世界の中でもっとも重要な二国間関係であった時代もあった。しかし、現在、もっとも重要な二国間関係とは、米中関係のことである。

 現在、日米関係は新しい時代を迎えている。日米同盟は、ポスト・ポスト第二次世界大戦時代に突入している。この新しい時代、日本は、より高いレベルでの独立(訳者註:アメリカからの)を果たし、世界の大国としての地位に伴う責任を果たすようになる。日米同盟は徐々に変化していくだろう。未来の歴史家が、日米関係史を振り返った時に、今回の2009年の総選挙が日米関係を新しい方向へ導く起爆剤となったと結論付けるようになる、と私は考えている。

 今回の総選挙の結果とそのアジア地域とアメリカに対する影響を議論するために、私はCSIS主催のフォーラムに出席する。タイトルはCSISシーファー・ポリシー・フォーラム「日本の選挙結果を理解する:選挙結果がアジアとアメリカにとって持つ意味」で今日の午後5時30分から、戦略国際問題研究所で始まる。

 出席者は以下の通りである。司会はボブ・シーファー(CBSニュース・ワシントン特派員、討論番組「フェイス・ザ・ネイション」司会)。討論参加者は、カート・キャンベル(国務省東アジア担当国務次官補)、マイケル・グリーン(CSIS日本部長、前国家安全保障会議アジア問題担当部長)と私、スティーヴ・クレモンスである。

 CSISによると、今回のフォーラムは満員になっているということである。視聴を希望される方はCSISのウェブページで中継をご覧いただきたい。

 

「日本の静かな革命?」

スティーヴン・ウォルト

「フォーリン・ポリシー」誌ウェブサイト内ブログ
2009年9月1日

 私を含め多くの人々は、アフガニスタン、パキスタン、ソマリアなどのような、ある意味常軌を逸した地域で起きた事件について、多くのことを、インクや紙、そしてブログスペースを消費しながら書いている。そのことについて謝ることはないと思っている。しかし、私は時々、考え込んでしまう。私がやっていることは、緊急なもの、生々しいものにばかり目を向けていて、重要なものに目を向けていないのではないか、と。それが人間の本性であったとしても、そればかりではいけないのではないか、と。人間が死んだり、建物が吹っ飛んだりすることは、人々の注目を集める。しかし、民主政体のゆっくりとした動きが長期的に見ればより重要である場合もあるだろう。

 先週行われた日本の総選挙について考えてみよう。私は日本政治の専門家でも何でもない。しかし、ここアメリカでもそうであるように、改革を進めるということは本当に難しいことだ、ということはよく知っている。また、いろいろなものに守られている、強力な官庁にいる官僚たちの力を弱めたり、移動させたりすることは本当に難しいことも知っている。そうであっても、自民党の敗北と、よりポピュリスティックな民主党の躍進によって、日本に二大政党制が誕生すると、日本の政治は、より説明責任が明らかとなり、硬直化した政策が変化するなど、その影響は多岐にわたるだろう。

 日本は今でもまだ、世界第二位の経済大国である。軍事費支出は世界第五位である。国民の教育水準は高く、先進的な産業を持ち、科学技術も進んでいる。日本がその気になれば、核兵器などすぐに作ってしまうだろう。日本国内には、アメリカにとって重要な軍事基地がいくつもあるし、日本とアメリカは、長年にわたって、安全保障条約で結びついている。

 これらの事実が意味することは、日本の経済政策と外交政策が大きく変更されれば、その影響は計り知れないということである。日本(民主党)が経済政策と外交政策を大きくシフトする、などと、私は言うつもりはない。しかし、私はこれから日本で起こることをしっかりと見ていこうと考えている。

(終わり)