「241」 翻訳 「アメリカは世界ナンバーワンの国だし、これからもそれは続く」と主張する論稿をご紹介しますA 古村治彦(ふるむらはるひこ)記 2014年9月19日

●経済の復活力(Economic resiliency)

 何よりも、アメリカ経済こそが世界における指導者の地位の源泉である。そこには歴史の鉄則などは多く存在しないが、その数少ない1つは、国力は直接的に経済的な強さとつながる、というものだ。バラク・オバマ(Barack Obama 1961年〜)大統領も「私たちの豊かさが我が国の力の源泉なのだ」と述べている。

バラク・オバマ

 2008年に起きた金融危機は、我が国経済の復元力(resilience)を証明し、我が国の地位と権威に対する衝撃に対処することができた。長期にわたる挑戦は残っている。しかし、アメリカほどの基本的な経済的強さに匹敵する力を持つ国は存在しない。アメリカ経済は、企業家精神、安定したそして効率的な資本市場、経験豊富な専門家たち、そして技術の面でのリードなどが一体となった、健全な構造的基盤の上に立っている。

 全ての側面で、アメリカ経済は世界最大の規模である。アメリカのGDP規模は、17兆ドルほどになっている。我が国の経済規模は世界第2位の中国のほぼ2倍である。我が国の株式市場の資産価値は中国のそれの5倍以上である。アメリカは海外からの直接投資(foreign direct investment)を惹きつけているし、世界最大の投資国でもある。

 しかし、経済面で最も重要なアメリカの強みは、その規模ではない。中国は世界最大の人口を抱えており、それを基盤として、将来のある時点で、世界最大の経済規模に達することになるだろう。しかし、歴史が示しているように、経済規模は、世界で最も強力な国を決定する上で最重要の要素とはならない。イギリスが世界覇権国として力を持っていた時期、中国は世界最大の経済規模を誇る国であった。しかし、中国は、中国の人々が「恥辱の世紀(century of humiliation)」と呼ぶように、のた打ち回る大国であった。

 経済の健全性を測定するためのより良い測定基準は、その質と持続可能性である。アメリカ経済は世界で最も豊かで、最も多様なそして技術的に進んだものである。中国は経済規模こそ大きいが、今でも貧しい国なのである。世界銀行の発表したデータによると、一人あたりのGDPはアメリカが5万3143ドル、中国が6807ドルである。これは私たちに重要な視座を与えてくれる。

 将来の見通しから考えると、アメリカは指導的な立場を維持していくであろうことは明らかだ。我が国経済を支える、技術革新、エネルギー、高等教育という3つの要素について考える。

 第一に、アメリカは技術革新に分野で、世界で最も進んだ国である。アップル社、グーグル社、フェイスブックス社、ツィッター社は、現在のアメリカ経済の活力を示している。しかし、これらの会社のうち、15年前に存在したのは1社だけである。市場価値で見て、世界最大の技術企業8社はアメリカに本社を置いている。3Dプリンター、人工知能、ナノ技術、クラウド・コンピューター、ロボット技術、ビッグデータ、最先端物質科学のような次世代の最先端技術の最前線について考えてみると、アメリカの企業家たちと企業は世界をリードしている。

 研究開発の分野でも、アメリカは世界をリードしている。今年、アメリカが研究開発に使った資金は総額4650億ドルに達する。これは世界の総額の30%を占める。

 その他の多くの強みと同じく、私たちの技術革新の分野における優位性は何も自然にパッとそこに存在するものではない。リスクを取ることを恐れない文化、研究に対するアメリカ政府の多額の投資、よいアイディアを生み出す最高の大学、各種の規制、流動性の高く、成熟した資本市場へのアクセスが総合して、技術革新分野でのアメリカの優位性を生み出しているのだ。素晴らしいアイディアをビジネスにまで発展させているのだ。シリコンヴァレーではこうした強み全てが統合されている。シリコンヴァレーは私たちに創造性と技術革新の精神を世界に示す象徴なのである。

 第二に、そして率直に言って予想されなかったが、アメリカの経済面での資産は国家規模のエネルギー見通しが明るいという点が挙げられる。

 過去40年間のうちの大部分の期間、アメリカは海外からの石油に頼り、エネルギーに関連して起きた様々な事件に巻き込まれてきた。アメリカの技術革新力と技術力は、これまで存在しなかったエネルギー資源を生み出した。我が国のエネルギーに関する見通しは、全ての側面で明るいものである。

 現在、アメリカは世界最大の天然ガス産出国であり、アメリカ国内の天然ガスの価格は世界のどこよりも低い。国際エネルギー機関は、2010年代末にアメリカが世界最大の産油国になっているであろうという予測を立てている。これまでの常識を超えたエネルギーがアメリカ経済を成長させ、雇用を生み出す。2015年、シェールガス関連で90万もの雇用が生み出されることになるだろう。

 我が国の新たなエネルギー安全保障は、世界における我が国の地位を強化し、世界に関与する力を強めてくれている。アメリカは同盟諸国を支援し、必要であれば、敵対諸国を罰することができるようになっている。例えば、イランに対する国際的な経済封鎖の成功したのは、アメリカが原油生産を増加させることができ、イランの原油を市場から追い出しても、ガソリン価格を安定させることができたので、アメリカの消費者たちに迷惑をかけることがなかったからだ。この経済制裁のために、イランもついに昨年、交渉のテーブルに出て来ざるを得なくなった。

 技術革新分野での成功と同じく、このエネルギー分野でのルネサンスは自然に達成されたものでも、幸運の産物でもない。これはアメリカだから成功させることができたのだ。多くの国々にもシェールガスは埋蔵されている。アメリカが劇的なそして急速なエネルギー分野での変化を生み出すことに成功した理由は、我が国が数十年にわたり賢い、そして重要な投資を重要な技術に行ってきたからで、開かれた投資環境、革新的な企業家精神、環境面での安全装置、インフラ、知的所有権との間に絶妙なバランスが維持されてきたからだ。アメリカ国内では天然ガスを安価で使用できるが、これによって、アメリカはエネルギー集約的な製造業の分野で、ヨーロッパや中国に比べて、競争力を持つようになっている。

 エネルギー関連の輸入が減ったことで、我が国の貿易赤字は4年連続で減少している。アメリカがエネルギー源を買うために使っていたお金が国内に留まることになった。我が国は、天然ガスと原油を世界に輸出できるようになり、それによって、同盟諸国を支援し、世界のエネルギー供給を安定化させ、我が国の富を増大させることができる。

 アメリカの経済力の強さを長期にわたって支えてきたもう一つの基盤は、アメリカの高等教育システムである。我が国の大学は世界の羨望の的である。世界の研究重点大学のベスト20校のうち17校はアメリカにある。アメリカの科学者たちは、他国の学者たちに比べて、多くの論文を著名な学術誌に投稿している。2013年のデータでは、82万の留学生がアメリカの大学で学んでいる。

ウォーレン・バフェット

 ウォーレン・バフェット(Warren Buffett 1930年〜)は投資家たちへ向けた最新の手紙の中で次のように書いている。「私は常に増加していくアメリカの富に“賭ける”ことは手堅いことだと考えてきた。実際、過去237年の間に、アメリカと反対に賭けた人で利益を得た人はいただろうか?我が国の現在の状況と1776年時点での状況を比べてみたら、そのあまりの違いに貴方は目を剥くことだろう。我が国の市場経済に備わったダイナミズムはその力をこれからも発揮し続け、素晴らしいものを生み出し続けることだろう。アメリカの最良の日々はこれからやって来るのだ」

(つづく)